命題84

「2つの中項面積の和に等しい正方形の辺にはそれに付加されて,全体と平方において通約可能で,それら全体と付加された線分上の正方形の和を中項面積とし,それらによって囲まれる長方形の2倍を,中項面積でかつそれら上の正方形の和と通約不可能にするただ1つの線分がある」

ABを2つの中項面積の和に等しい正方形の辺とし,BCが付加されたとする。そのとき,ACとCBは平方において通約不可能で与えられた条件を満たすとする。 ].78

ABに与えられた条件を満たすような線分が他には付加されない事を示す。

可能ならば,BDを付加する。ADとDBは平方においてのみ通約不可能。AD上,DB上の正方形の和は中項で,長方形AD,DBの2倍も中項。そして,AD上,DB上の正方形の和と長方形AD,DBの2倍は通約不可能。 ].78

EFを有理線分とする。EF上に,AC上,CB上の正方形の和に等しく,EMを幅とするEGを作る。また,長方形AC,CBの2倍と等しく,HMを幅とするHGを作る。それから残りのAB上の正方形はELと等しい。よって,ABはELと等しい正方形の辺である。 U.7

また,AD上,DB上の正方形の和に等しく,ENを幅とするEFをEI上に作る。

ここで,AB上の正方形はELと等しいので,残りの長方形AD,DBの2倍とHIは等しい。 U.7

AC上,CB上の正方形の和は中項で,EGと等しい。 よって,EGも中項。そして,有理線分EF上にEMを幅としているので,EMはEFと長さにおいて通約不可能な有理線分である。 ].22

また,長方形AC,CBの2倍は中項でHGと等しいので,HGも中項。そしてそれはEF上にHMを幅としているのでHMはEFと長さにおいて通約不可能な有理線分である。].22

AC上,CB上の正方形の和は,長方形AC,CBの2倍と通約不可能。 よって,EGもHGと通約不可能。よって,EMもMHと長さにおいて通約不可能。 ].78 ].11

そして,両方とも有理。よって,EMとMHは平方においてのみ通約可能な有理線分である。よって,EHは余線分。そして,HMが付加される。 ].73

同様に,EHは余線分で,HNが付加される事が証明される。 よって,余線分に全体と平方においてのみ通約可能な異なる2つの線分が付加されるのは不可能。 ].79

よって,ABに他の線分は付加されないという事が示された。

証明終了


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