命題113

「有理線分上の正方形に等しい長方形が余線分の上に作られるならば,二項線分を幅とし,二項線分の2つの項は余線分の2つの項と通約可能であり,かつ同じ比をもち,さらにこのようにしてできた二項線分は余線分と同じ順位をもつ」

有理線分をAとし余線分をBDとする。長方形BD,KHはA上の正方形に等しいとする。すなわち,有理線分A上の正方形に等しい長方形がKHを幅としてBD上に作られる。

KHは二項線分であり,その項はKHの項と通約可能でありかつ同じ比をもち,さらにKHはBDと同じ順位をもつ事を証明する。

DCがBDにたされたとする。そのとき,BCとCDは平方においてのみ通約可能な有理線分である。長方形BC,GはA上の正方形に等しいとする。 ].73

ところがA上の正方形は有理で,ゆえに長方形BC,Gも有理。またそれは有理線分BC上にある。ゆえに,Gは有理でBCと長さにおいて通約可能である。 ].20

長方形BC,Gは長方形BD,KHに等しいので,CBがBDに対するようにKHはGに対する。ところが,BCはBDより大きく,ゆえにKHはGより大きい。 Y.16 (X.14)

Gに等しいKEを描く。その時KEはBCと長さにおいて通約可能である。

CBがBDに対するようにHKはKEに対するので,入れ替えて,BCがCDに対するようにKHはHEに対する。

KHがHEに対するように,HFはFEに対するようにする。そのとき残りのKFがFHに対するようにKHはHE,すなわちBCがCDに対する。 X.19

ところが,BCとCDは平方においてのみ通約可能で,ゆえにKFとFHも平方においてのみ通約可能である。 X.11

KHがHEに対するようにKFはFHに対し,KHがHEに対するようにHFはFEに対するので,ゆえにKFがFHに対するようにHFはFEに対する。すなわち,第1項が第3項に対するように第1項上の正方形が第2項上の正方形に対する。ゆえに,KFがFEに対するようにKF上の正方形がFH上の正方形に対する。 X.11 X.Def.9

ところが,KF上の正方形はFH上の正方形と通約可能なので,KFとFHは平方において通約可能で,ゆえにKFはFEとも長狭において通約可能で,すなわちKFはKEと長さにおいて通約可能である。 ].11 ].15

ところが,KEは有理でBCと長さにおいて通約可能で,ゆえにKFは有理でBCと長さにおいて通約可能である。 ].12

BCがCDに対するようにKFはFHに対し,BCがKFに対するようにDCはFHに対する。 X.16

BCはKFと通約可能で,FHはCDと長さにおいて通約可能である。

BCとCDは平方においてのみ通約可能な有理線分で,ゆえにKFとFHは平方においてのみ通約可能な有理線分である。よって,KHは二項線分である。 ].36

もし,BC上の正方形がCD上の正方形よりBCと通約可能な線分上の正方形だけ大きいならば,上の正方形はFH上の正方形よりKFと通約可能な線分上の正方形だけ大きい。 ].14

そして,もしBC上の正方形がCD上の正方形より定められた有理線分と長さにおいて通約可能ならば,FHもそうであり,もしBCとCDが両方とも通約不可能ならば,KFとFHの両方ともと通約不可能である。

ところが,もしBC上の正方形がCD上の正方形よりBCと通約不可能な線分上の正方形だけ大きいならば,KF上の正方形はFH上の正方形よりKFと通約不可能な線分上の正方形だけ大きい。 ].14

また,もしBCは定められた有理線分と通約可能ならば,そのときKFもそうであり,もしCDが通約可能ならばFHもそうであり,もしBC,CDのいずれも通約不可能ならば,KF,FHの両方とも通約不可能である。

よって,KHは二項線分で,その2つの項KFとFHは余線分の項BC,CDと通約可能であり,かつ同じ比をもち,さらにKHとBDは同じ順位をもつ。

したがって,有理線分上の正方形に等しい長方形が余線分の上に作られるならば,二項線分を幅とし,二項線分の2つの項は余線分の2つの項と通約可能であり,かつ同じ比をもち,さらにこのようにしてできた二項線分は余線分と同じ順位をもつ。

証明終了


第10巻命題112へ  第10巻命題114へ  第10巻目次へ